2進数の解像度

SFPCのはじめ、Zachの最初の授業は、作品事例を見ながらの学校の簡単なイントロダクションの後、Human Fax Machineと呼ばれる実験から始まった。

送信者と受信者にわかれて、送信者は自分が描いた図形を音だけで受信者に伝える。受信者がその図形を再現できたら成功。この音はこういう意味、というのは事前にお互いでルールを決めておく。まさにFAXがピーヒョロロという音で通信しているのを人間でやってみるゲーム。

大事なのは、受信側と送信側のルール決め。人間同士で、「直線のときには、『バン』、曲線のときには、『バンバン』にしよう」みたいな会話をしてるとなんとなくこのままいけそうに思えるけど、いざ描いてみると「曲線どっち向きだっけ?」「今描いてるのは直線?曲線?」みたいになってしまう。SFPCには色んな経験を持った人がいるけど、プログラムで絵を描いたことがある人は、曲線を描くにはどういうパラメータがあって、一言に曲線といっても、それは始点、終点、カーブを決める点など色んな要素で構成されていることが想像つきやすい。ここでは、さらに自分自身がコンピューターになることでそれを体験的に理解できる。

最終的には、自分のグループでは、一回ごとの移動距離をグリッドに沿って決めて、曲線開始の合図、曲線終了の合図、曲線の膨らみの向き、お互いが毎回通信を開始・終了するときの合図など、曲線を描画するためのひとつひとつに音を割り振っていった。

送信チームと受信チームは段ボールで作った壁ごしに音を伝える。 (ちなみに写真中央、右腕の赤と緑のしましまのみ写っているのが自分である。)


次の授業は、バイナリについて。01010001みたいなやつ。

source

「今後全てに関わってくるから最初に教えとかなきゃならない」とのこと。

恥ずかしながら、バイナリをいじるとかプログラムの中でもかなりマニアックな作業だろう、見かけてもややこしいから極力触りたくないと思ってたけど、授業を終える頃にとても反省した。

コンピュータで扱う全てのファイルはバイナリデータでできている。日常で見たり、聞いたり、読んだりするものもコンピュータ上では全てバイナリに変換されて扱われている。

Zachは、photoshopで描いた絵を音の波形に変換したり、Webカメラから取り込んだ映像を使って、バイナリを見ることでデータの変化を抽出することができることなんかを説明してくれた(たぶんこれが画像解析の基礎にもなる)。その他にもバイナリを説明するにあたって、いくつか実験的なアーティストの作品を紹介してくれた。

バイナリをちゃんと理解していると、アイディア次第でそれだけでも作品が作れちゃうんだと言わんばかりだった。

授業は、最後に「バイナリをバイナリを全く知らない人(例えば8歳の子供でも)わかるようなツールのアイディアを考える」という課題をそれぞれ発表して終わった。自分は01の変化をリズムに例えてみたけど、他の人も食べ物と胃袋で説明したり、人の会話で表現したりしてて面白かった。

0と1の動きを人で再現


仕組みを知ると、テクノロジーを見るときの解像度があがる。 大体のテクノロジーは、無数のより細かいテクノロジーの組み合わせでできているので、解像度が高いと何と何を組み合わせてそれが成り立っているかがわかるし、それができると、逆に分解することもできるし、組み立て直すこともできる。

広告仕事で話にあがるテクノロジーは、もうかなり高レベルでパッケージ化されているものが多い。仕事で、「デジタルのアイディアほしいんだけど、最近なにかいけてるテクノロジーとかない?」みたいなこと聞かれて、「そうっすねー、ヘッドマウントディスプレイとか流行ってますよー」みたいな会話をしたときに、ちょっと個人的にモヤっとするかんじ。自分で自分にもうちょっといけるんじゃないかと思うかんじ。確かにテクノロジーの話なんだけど、最近の流行に詳しくてそれを使ったアイディアを出すのには、別に作り方まで知ってなくてもいい。

アイディアの部分で、ものの作リ方を知っていることの強みがあるなら、ひとつはもう一段階細かい解像度でテクノロジーを考えられるところだろう。作り方を知らなきゃ知り得ない中身の構造を理解してれば、抽出したり、応用したり、別のものと組み合わせて、まだ名前もついてない新しいものを提案できるようになるかもしれない。

前にKyleが東京でワークショップをやって見に行ったLight Leaksとかは、最近では商店街のおじさんでも知っている"3Dプロジェクションマッピング"の分類なんだろうけど、Lighe Leaksでは一眼を使って自作3Dスキャンをしたり、本当に仕組みを根っこから知らないとできないところから作っている。結果、いま普及しているプロジェクションマッピングの作り方では絶対にできない表現ができてて衝撃だった。そしてこの話を一緒にFAXになってたバンバンやってたSFPC学生のJonasにしたら、この作品の共同制作者のJonasであることがわかり、また衝撃を受けた初日の授業だった。(ちなみに最初のツイートの写真で完璧な笑顔で写っているのが彼である。)